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特定秘密保護法に関するパブリックコメント募集について

PUBLIC COMMENT

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7月24日から8月24日まで、特定秘密保護法についてのパブリックコメント(以下、パブコメ)の公募が行われます。パブコメは国民が政府に対し直接意見を表明できる数少ないチャンスであり、特定秘密保護法の施行までにまだ時間がある中で私たちに出来るアクションの一つでもあります。

 昨年の12月に特定秘密保護法は国会で可決され、公布されました。この法律は、世論調査では約8割の人が反対する中、与党が急いで成立させたために不完全な部分が多く、公布後にも議論しなければならない多くの課題が残りました。その上、施行までの期間も一年以内と決められたため、早急な法整備が求められる結果となりました。そのような流れの中に今回のパブコメがあります。

 今回、政府はパブコメを1ヶ月という長いスパンで募集しています。これは行政手続法(第39条)によって定められた期間であり、また政府がパブコメの公募をかけたのも、今回募集がかかっている3つのトピックのうちの一つ(③施行令)が行政手続法に該当するからです。残りの2つは任意で集められています。

パブコメではより多くの人が意見を提出することが大切です。しかし、実際に政府のホームページをみても専門的な資料が多く、書くのをためらってしまうかもしれません。ここで解説する内容は以下の通りです。

⒈ パブリックコメントとは―その重要性

⒉ 書き方、文例

⒊ 具体的な手順

(参考:日弁連、グリーンピース、NHKスペシャル)

⒈ パブリックコメントとは

 パブリックコメントとは、政府が規制・法律を決める際に、原案を事前に公表した上で国民から意見を集め、反映させる手続きのことです。特定秘密保護法が交付される前にもパブコメの募集が行われ、約9万件の意見が集まり、その内の77%が秘密保護法に対して反対の意見を表明していました。ここでは、パブコメがなぜ重要なのかについて、①国民が政治的決定のプロセスに参加する機会であること、②政策の正当性を問う場であること、③国会での議論を生み出す可能性があること、以上の3つを指摘します。

① 国民が政治的決定のプロセスに参加する機会であること ​ 

 パブコメは全国民が直接的に政府に対して意見を表明できる手段の一つです。選挙によって選ばれた政治家が物事を決定していくのは議会制民主主義の重要な側面ですが、そこで代表されるのは常に「民意の一部」でしかありません。そのため、私たち市民が政治家に対し選挙以外の場で意見を表明し続けることも重要になります。

 デモも選挙以外で民意を表明する適切かつ重要な手段ではありますが、そこで使われるコール等はどうしても内容的に限定されてしまうため、「政治的な主張」とはなっても、その主張の「根拠」を表明することは難しいと言えます。そのため、パブコメは正当な「根拠」に基づく政治を行っていく上で、市民の側から意見を表明できる非常に有効かつ貴重な機会となります。

② 政策の正当性を問う場であること

 パブコメを送らないことは、政府に「国民からの異論はない」と解釈し、不適切な法案を正当化させてしまう原因になりかねません。法律案に対して賛成でも反対でも、その法律を国民にとって少しでも良いものにするためには、送らないよりも送った方がいいでしょう。このことは上の民主主義政治のプロセスともリンクします。

③ 国会での議論を生み出す可能性があること

 国民が送るパブリックコメントは必ず政府の記録として残ります。それによって、国会の審議において国会議員や有識者が政府に対して、パブリックコメントで集まった意見やデータをもとに質疑を行うこともあります。(参考:平成25年12月5日 参議院国家安全保障に関する特別委員会 )

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⒉パブリックコメントの書き方

 今回、政府は特定秘密保護法に関して三つのパブリックコメントを集めています。三つのパブコメでそれぞれ質問が異なるため、三つ全てに異なる指摘を送ることがより効果的です。集めているパブコメは以下の三つです。

①「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」(以下、「統一運用基準」)に対する意見募集の実施について

②「内閣府本府組織令の一部を改正する政令(案)」に対する意見募集の実施について(特定秘密保護法関連)

③「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」(以下、「施行令」)に対する意見募集の実施について

 なお、この時注意していただきたいのは、①と③については、対応する項目を意見のはじめに示さなければならないということです(例:「(統一運用基準5−5(6)ア)」と初めに示した後、それに対応する反対意見を述べる)。以下は、それぞれのトピックの概要と問題点についての解説と、パブリックコメントの文例です。

 ①「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」(以下、「統一運用基準」)に対する意見募集の実施について

 これは特定秘密保護法を実際に運用したり特定秘密に関わったりする人たちが守らなければならない「基準」に対する意見募集です。このトピックは特定秘密保護法の運用についての基本的な枠組みに関するものであり、その意味で、今回最も重要なトピックであると考えられます。

 今回の基準案では秘密にできる項目が23項目から55項目に増えています。しかし、今までと同様、定められているのは「基準」であり、「法律」や「政令」ではありません。そのため、この55項目に反したからといって処罰を受けるわけではありません。また23項目から55項目になり「基準」が明確になったように見えますが、この新たに加えられた「細則」というのは、元々の「基準」であった項目の説明でしかなく、内容や言葉の曖昧さ自体に変化は見られません。つまり、特定秘密の指定の範囲が恣意的に広げられる可能性は残ったままです。

 なお、この基準案については多くの論点があるため、ここでは割愛させていただきます。より詳しくはパブコメ補足情報をお読み下さい。

文例1 ______________________________________________

(統一運用基準1-2(2))、(統一運用基準3-3(1)(2)ア、イ)

私は特定秘密保護法に反対します。

なぜなら、秘密の指定から点検、管理までの全てが内閣によって行われる仕組みになっているため、行政権の拡大につながる可能性があるからです。

 その上で統一的な運用を図る基準案に反対します。

(統一運用基準1-2(2))

 今回の素案には、国民が秘密指定の解除を請求する制度が入っていません。特定秘密保護法はアメリカの法律を参考にしていますが、そのアメリカには「必要的機密解除審査」という専門家や市民が秘密指定の解除を要求できる権利が保障されています。本来、情報は国民のものであるべきです。国民にすべての情報を公開することは不可能ですが、情報へアクセスできる権利を保障するべきです。

(統一運用基準3-3(1)(2)ア、イ)

 特定秘密文書は指定期間が30年を超えたものは期間の満了したのち国立公文書館に移管されます。しかし、30年以下の文章は首相の同意の下に廃棄を行うことができます。それでは、廃棄された文章が、適切に秘密指定が行われたものか確認することができません。秘密指定された30年以下の文章も保管することを規定するべきです。

 以上のような理由から私は特定秘密保護法、及び、統一運用基準案に反対します。

※これに関しては元米国政府高官で、知る権利と国家機密との調整を図ったツワネ原則の起草にも関わったモートン・ハルペリン氏とオープンソサエティのパブコメや日弁連の海渡弁護士の例も是非是非参考にしてください。

「秘密保護法対策弁護団BLOG(ハルペリン氏・オープンソサイティー)」

「秘密保護法対策弁護団BLOG(海渡弁護士)」

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 ②「内閣府本府組織令の一部を改正する政令(案)」に対する意見募集の実施について(特定秘密保護法関連) 

 内閣府内にどのような機関を置くのか定めているのが内閣府組織令です。秘密指定が正当かどうかチェックする「独立公文書管理監」を内閣府内に設置しようという内容です。秘密指定の検証から監査、場合によっては秘密の「解除」をも担います。

 秘密指定の恣意的な乱用を防ぐ為にも、特定秘密保護法については独立性の高いチェック機関が必要です。しかし、この独立公文書管理監は内閣府内にあり、その独立性については不安があると言えます。また、「特定秘密の提供が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」がある時には行政機関の長が秘密を独立公文書管理監に提供しなくてもいいなどの問題があります(①統一運用基準29p, 5-3 (2)ウ)。「独立性の高い」「チェック」機関としては不十分と言えます。

文例2

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 今回の政令案で示された「独立公文書管理監」には、秘密開示の権限がありません。「独立公文書管理監」は特定秘密の要約を受けて、チェックを行います。すべての情報の開示を要求する権利・調査を行うことのできる権利は保障されていますが、行政機関から開示を断られる可能性があります。恣意的な秘密指定を防ぐために、「独立公文書管理監」にすべての情報へアクセスできる権限を保障するべきです。

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 ③「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」(以下、「施行令」)に対する意見募集の実施について

 施行令とは法律(ここでは特定秘密保護法)を施行するための細かい規定・命令です。ここでは適正評価の仕組みや、どのような機関が秘密を指定するか、どのように秘密を管理方法、解除の規定について書かれています。

  しかし、ここで規定されている管理方法や解除方法はあいまいな部分が多く、重要な資料になりうる特定秘密が「秘密」のまま廃棄される可能性も残しています。たとえば、この施行令で決められている廃棄の基準は明確でなく、廃棄するかどうかは秘密を管理する側の裁量によって左右されてしまいます。また、秘密を直接知ることが出来る人も非常に狭い範囲に限定されているため、特定秘密保護法に関する裁判の際には、弁護人に特定秘密が開示される保障がありません。

 なお先述の通り、今回のパブリックコメントはこの「施行令」が行政手続法第39条に該当するため出てきたものです。しかも、行政手続法第42条では集められたその意見を「十分に考慮しなければならない」と定められています。

文例3

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(施行令第4条、12条1項10号)

  特定秘密の指定期間が行政文書の保管期間よりも長い場合、特定秘密が指定期間を満了する前に廃棄されてしまう可能性があります。その原因には廃棄の基準が明確に示されていないということがあります。特定秘密の「漏洩のおそれがある緊急の事態」の際に廃棄していいことになっていますが、具体的にどのような事態なのか明確ではありません。これでは恣意的な廃棄も行われる可能性があります。より具体的に廃棄の基準を定め、チェックを行う第三者機関も廃棄の妥当性を確認できるようにするべきです。

(施行令第18条)

  秘密保護法違反の裁判において、検察や裁判官には情報の開示が保障されています。しかし、弁護人に対しては場合によってはその裁判に関連する特定秘密の内容が確実に開示される保障はされていません。不正な裁判を防ぐためにも、弁護人への情報の開示を保障するべきです。

※施行令に関しては、グリーンピースが行政手続法第42条の観点から「特に重要」として、その問題点を詳しく指摘しています。合わせてご参照ください

「グリーンピース「特定秘密保護法 パブコメ大募集中!」

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3.具体的な提出手順

①上にあげたURLをクリック! ②「意見提出フォームへ」をクリック!

③郵便番号、住所、氏名、連絡先を入力して・・・

④提出意見を入力だああああ!!!

⑤「確認画面へ進む」をクリックし内容を確認!

※万が一、自分の文章が送られていないことにならないようにするためにも、ここでスクリーンショットなどを行い、送った意見を手元に保存しておきましょう。

⑥「画像認証入力欄」を記入し、「提出する」をクリック!

わあ!とっても簡単なんだね!

この他にもSASPL以外の団体が様々な指摘を行っています

グリーンピース『特定秘密保護法 パブコメ大募集中』

http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/blog/50244/

特定秘密対策弁護団『【お知らせ】秘密保護法関連パブコメの参考書面を加筆しました』

http://nohimituho.exblog.jp/23069222/

毎日新聞 『Listening:<特定秘密保護法>意見公募 運用基準改善求め「知る権利」守ろう』 2014年8月4日

http://mainichi.jp/journalism/listening/news/20140804org00m010005000c.html

秘密保護法に反対する牧師の会 『「秘密保護法」運用基準・施行令にパブリック・コメントを出しましょう!』

http://anti-secret-law-pastors.blogspot.jp/

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最後に

 多数の反対をうけてなお、特定秘密保護法は十分な議論を行ったとはいえないまま通過しました。パブリックコメントなどを送ることに意味など無いのではないかと思う人もいるかもしれません。確かに、どれだけ活用するかは政府の判断に委ねられるため、集められた意見が活用されない可能性もあります。

 しかし、だからこそ私たちはパブリックコメントを送らなければなりません。なぜなら、民主主義の保障する自由、そして権利は私たち自身が行使することによって初めて守られるものであって、政治家がタダで守ってくれるものではないからです。7月25日朝刊の東京新聞はパブリックコメントの公募について「政府がパブコメを反映させるか監視する必要がある」と書いています。私たちの言葉を、行動を、政治に反映させていく努力を怠ってはなりません。

 私たちのことは、私たちの手で決めていきましょう。選挙だけでない、政治の「過程」に私たち自身がコミットしていきましょう。政治は結果でなくその「過程」なのです。私たちには自分の頭で考える力と権利、そして意見を表明する自由があります。「民主主義が終わった」というのなら、またここから始めればいい。まだ何も終わっちゃいません。

BE THE CHANGE.

Keep your heads up, it’s not over yet.

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