OUR SUGGESTION FOR S.P.L.

 

 

 2014年12月10日に施行される特定秘密保護法は、安全保障や外交等の国家機密の漏洩を防ぐために作られましたが、日本国憲法で保障されている国民の自由と権利を著しく制約するものです。これは憲法によって権力を縛り、国民の自由を守ろうとする立憲主義に明確に反しており、そのため抜本的な改正が早急に求められます。

 特定秘密保護法によって著しく侵害される権利に「知る権利」があります。民主主義社会において政治的決定を行う主体は私たち国民一人一人です。そのため、国民にとって自由な政治的判断を行うための知的資源の確保は非常に重要な問題となります。

 

 今回SASPLは、A. 自由に情報を受け取れる消極的「知る権利」と、B. 主体的に情報を入手するための積極的「知る権利」およびその他の権利を保障すべきという観点から、これまでの問題点の指摘にとどまらず、独自の「提言」を出すことにしました。その要旨は以下の通りです。

 

A. 消極的「知る権利」を保障するための3つの提言

A-1:秘密指定の範囲・禁止事項を明確に定義すること

A-2:秘密指定の期間の延長に関する規定をより厳格にすること

A-3:行政権から独立したチェック機能を保障すること

B. 積極的「知る権利」およびその他の権利を保障するための3つの提言

B-1:処罰の対象・内容について全面的な見直しをすること

B-2:全ての報道に関わる者の報道・取材の自由を明確に保障すること

B-3:適正評価の対象者が評価を拒否した場合の規定を明確にすること

 

 これは自由で民主的な日本社会を「保守」する私たちの立場とヴィジョンを明確にするものであり、この国に生きる人々への呼びかけであり、そして政治家一人一人へのメッセージです。私たちはこの提言をもって現行の特定秘密保護法に対し修正を求め、またこの提言の内容を含まない修正・現行維持に対しては明確に廃案を求めます。

 

 

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A. 消極的「知る権利」を保障するための3つの提言

 ここでは消極的「知る権利」について、つまり国民が「公権力の暴走」により妨げられることなく自由に情報を受け取るという「知る権利」の観点から、3つの提言を行います。

 

A-1:秘密指定の範囲・禁止事項を明確に定義すること

 本法は秘密指定に関する条文の中に「その他」といった文言が多く組み込まれるなど、行政の恣意的な判断による指定範囲の拡大解釈が可能となっています。また、恣意的な解釈変更への対策も組み込まれていません。

 例えば、原発事故や官僚の汚職等は、それらの情報が安全保障や外交に関する情報として特定秘密に指定される可能性も否定できません。更に、本法の第十二条において「特定有害活動(スパイ活動)」、「テロリズム」の定義が定められていますが、何をもってテロ、スパイ活動なのかについて条文は明確に定めておらず、政府も明らかにしていません。つまり、スパイ活動やテロに関する情報について「秘密」の範囲が広がりかねないということです。また、例えば法律の条文の解釈を変えるなどの「抜け道」は存在します。

 そのため私たちは、そうした曖昧な文言を極力減らし、秘密指定できる範囲を詳細に定めることを提案します。そして、官僚や政治家の違法行為、国際人権法における違法行為など、国民がそうした重要な問題を知ることが出来るように、「秘密にできない事項」を法律に明記することを提案します。

 

 

A-2:秘密指定の期間の延長に関する規定をより厳格にすること

 秘密の指定期間の長期化は、国民による事後的な制度改善のためのフィードバックを困難にします。そのため、秘密指定の期間についての規定には厳重な審査と基準が求められ、事実、日本が参照した他国の制度もそうなっています。

 例えばアメリカの場合、原則の25年を超える場合はそれぞれの情報に対し、個別にその情報に適した期限を設けています。また延長する際も、恣意的な秘密の長期化を避けるため、審査委員会の審査も受けなくてはならないなど、日本よりも遥かに厳しい規定が設けられています。他にも必要以上の期間延長に関する開示要請規定や規定に反した期間の延長に対しての罰則など、包括的に秘密指定期間の長期化を防いでいます。

 しかし特定秘密保護法は、行政の恣意的な判断や拡大解釈可能な規定などにより、必要以上に秘密の長期化をさせてしまう恐れがあります。そのため私たちは、適切なタイミングで国民が解除された秘密を評価し制度改善を行えるよう、秘密指定期間を延長する場合の規定をより厳格にすることを求めます。

 

A-3:行政権から独立したチェック機能を保障すること

 行政権の暴走による法の恣意的な運用を防ぐためには、法がどのように運用されているのかを、行政から独立して監視するための仕組みがなければなりません。しかし特定秘密保護法では、条文上定められているチェック機関のうち、内閣内の一つの機関(情報保全監察室)しか情報に直接介入することができなくなっており、独立性の高いチェック機関があるとは言えず、早急な改善が求められます。

 まず私たちは、内閣府から独立した監視機関、または独立性の高い第三者機関を設けることを法律に明記するよう求めます。例えばアメリカの場合、行政機関内に独自のチェック機関が設けられていますが、そこに務める職員は再び他の行政機関に戻ることが無いようなルール(ノーリターン制)によって癒着が防止されており、チェック機関の独立性が担保されています。

 加えて私たちは「三権分立」の観点から、司法機関・立法機関にも情報へのアクセス権を認めることを本法に明記するよう求めます。日本が視察したドイツ、アメリカ、イギリスでは国会に情報機関を監視する機関が設けられ、その機関にはすべての情報へとアクセスする権利が認められています。

 「国際常識にかなう法律」を意識して作られたという特定秘密保護法もこれらの国々に倣うべきだと考えます。私たちは独立性の高いチェック機能を保障すべく、そうした性質をもつ監視機関の設置と、「三権分立」の活性化による行政権の抑制を提案します。

 

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B. 積極的「知る権利」およびその他の権利を保障するための3つの提言

 ここでは、国民が主体的に情報を入手することを保障する積極的「知る権利」の観点、そして「知る権利」ではないものの特定秘密保護法によって著しく脅かされると思われるその他の権利を保障すべきという観点から、3つの提言を行います。

 

B-1:処罰の対象・内容について全面的な見直しをすること

 現行の特定秘密保護法の処罰規定には、①処罰対象の範囲が非常に曖昧であること、②その処罰内容は他の法律と比べても非常に重いものであること、という問題点があります。この2つの問題点により、行政が恣意的な捜査・逮捕を行えるだけでなく、重い刑罰内容を前に、秘密を得る側の市民にも自主規制が働き、ますます国民から重要な情報が遠ざかることが懸念されます。

 まず①について、本法第24条、25条では、「秘密を得ようとする行為」として「煽動」「教唆」「共謀」と定義されていますが、これら3つについての具体的な説明はなされていません。また、これらの行為は、「結果」ではなく「意図」のレベルで処罰を認めるものであり、従来の刑法の原則から大きく外れるものです。

 次に②について、本法の処罰規定は他の情報漏洩に関する処罰規定に比べて非常に重い内容となっています。例えば、国家公務員法の場合、秘密の漏えいに対して最長懲役1年、自衛隊法は最長懲役5年となっています。それに対して、特定秘密保護法の最長懲役10年という規定は執行猶予がつかない上に長すぎます。

 これらのことから、私たちは処罰規定を最長懲役3年に改めるよう求めます。そして「秘密を得ようとする行為」に対する処罰に反対し、その内容とされる「煽動」「教唆」「共謀」の徹底的な見直し、もしくは文言の削除を求めます。

 

B-2:全ての報道に関わる者の報道・取材の自由を明確に保障すること

 本法はB-1で指摘した処罰対象となる行為について、第22条で、「公益を図る目的」を有し「法令または著しく不当な手段」でなければ「配慮規定」として「報道の業務に従事する者」の取材の自由が認められるとされています。しかし、これらの基準は曖昧であり、例えば「報道の業務に従事する者」にフリーライターや一般のブロガーが含まれるかどうかは定かではありません。

 取材・報道の自由に関する曖昧な規定は、全てのマスコミ、市民メディアの取材・報道の自由を萎縮させる効果を持ちます。そのため、「配慮規定」の定義の明確化を前提としつつ、全ての報道に関わる人の取材・報道の自由を保障することを明記すべきです。

 

B-3:適正評価の対象者が評価を拒否した場合の規定を明確にする

 適正評価制度とは、秘密を取り扱う人が「適正」であるかを「評価」する仕組みのことですが、この適正評価制度は、①「評価」の対象者が明確に限定されていないこと、②プライバシーの侵害にあたること、③適正評価を拒否した場合についての規定が盛り込まれていないこと、以上3つの問題点があります。私たちの提案は以下の通りです。

 まず私たちは、秘密の範囲を限定することにより、適正評価の対象となる人の範囲をより狭めるよう求めます。A-1で指摘したように、秘密の範囲が曖昧である現在の特定秘密保護法においては、秘密を取り扱う人の範囲もまた無制限に広がる可能性があり、行政の恣意的な解釈によって際限無く適正評価の対象になる人が生まれることを防ぐ必要があるためです。

 次に、そうした対象者に対する「評価」項目について、極力その人のプライバシーを侵害しないような評価項目に変更するよう求めます。具体的には、飲酒節度・精神疾患・家族に関する事項を評価項目から外すことを提案します。

 最後に私たちは、適正評価を拒否された場合でも、解雇や減給などの不利益な扱いを禁止することを明文化することを求めます。現行の特定秘密保護法は、適正評価を拒否した場合の規定が盛り込まれていないため、解雇や減給といったリスクを感じた評価の対象者が嫌々ながら適正評価を受けざるをえなくなってしまう恐れがあるためです。

 以上、私たちは適正評価制度について、①A-1で指摘した秘密の範囲指定の明確化により「対象者」の範囲を狭めるとともに、②評価項目を見直すことと、③適正評価を拒否した場合の規定を盛り込むことを提案します。

 

 

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 「知る権利」を中心に国民の自由と権利を著しく奪いかねない特定秘密保護法は、パブリックコメントで78%が反対を占める中わずか約68時間という短い審議時間で可決されました。そして二度目のパブリックコメントにおいても過半数が批判的な意見であったにも関わらず、抜本的な修正を経ないまま施行されようとしています。これは健全な民主主義国家ではあるまじき、国民の声や議会での討議の過程への無知と不誠実、破壊であるとさえ言えます。

 国民の自由と権利の観点から、そして民主主義という手続きの観点からも、特定秘密保護法は抜本的な修正もしくは廃案がなされるべきです。私たちは、私たちの自由と権利を著しく侵害する特定秘密保護法に反対し、以上の提言で確認したような、徹底的に立憲主義の原則に沿った「最低限度の見直し」を求めます。